Point of view [2016.12.23]

第77回 石田 淳

今の時代に合った「教え方」をしているか?


石田 淳  いしだ じゅん
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者

米ビジネス界で大きな成果を上げていた行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジし、行動科学マネジメントとして確立。精神論に走るのではなく、行動に焦点を当てる科学的で実用的な手法で評価を集める。日経『課長塾』の講師を務め、他セミナー・講演を精力的に行う。会員企業は1500社以上。行動科学マネジメントに関する著書は50冊以上発表。主な著書に「教える技術」「続ける技術」など。

 

なぜ人材育成がうまくいかないのか

コンサルティングや研修を通して多くの人事部の方にお話を伺うが、話題の中心はもっぱら「人材育成」である。どの企業も人材育成に頭を悩ませており、人を教える役職であるマネジャーが機能しておらず、社員が育っていないのが現状である。そもそもなぜ社員育成がうまくいっていないのだろうか? その答えはたった一つである。マネジャーが「今の時代に合った教え方」を教わっていないからなのだ。

日本では「仕事は細かく教えてもらうのではなく、盗んで覚えるものだ」という考え方が相変わらず根強いのが現状。多くのマネジャーは上司・先輩からそう言われながら育ち、"仕事の内容を細かく適切に教えてもらう"といった経験をしていないため、自分の部下に対しても同じような指導しかできないのは当然である。そしてこのような教え方では、今の若い世代には通用しない。彼らは子どものころからさまざまな習い事をし、何でも手取り足取り教わって育ってきた世代だ。教えられるということに抵抗はないが、「教えてもらえない」などということはあり得ないと思っている。つまり今の若い世代は教えられ好きなのだ。また彼らは叱られて育ってきていないため、ストレスに弱い。そのため、旧式の教え方を続けた結果、若い世代の社員たちはパワハラと認識し、混乱し、精神を患う人もいる。昨今発生した大手広告代理店のような悲劇に発展する場合も少なくないのである。

今の時代に合った、「正しい教え方」とは

とにかく、マネジャーは「自分が新人のときはこうだった」という思い出はいったん忘れ、今の時代に合った指導法を学ぶべきである。「上司のほうが偉いのだから、部下が変わるべきだ」と考えるのももっともだが、人は簡単には変えられない。経験豊かで能力も高い上司が変わるほうがはるかに効率的である。それは自分を変えるという意味ではなく、科学的な指導をすればいいのだ。そこに感情を交える必要はまったくない。感情を交えるから、部下育成が大変なことに思えるのだ。部下の何ができていないのかを明確に把握し、どうすればいいのかを具体的行動で教えればいいのだ。

私が提唱している行動科学マネジメント「教える技術」では、人の態度・感情ではなく「行動」にフォーカスしている。すべての結果は行動の積み重ねによって得られるからだ。いい結果はいい行動の積み重ねがあったからにほかならないし、悪い結果が出るのは、途中の行動のどこかに問題があるからである。ところが多くの人は悪い結果が出たときに「何をやってもダメだな!」「やる気あるのか!」といった感情論・精神論で片づけてしまっている。それでは部下が育たないのは当然である。仕事ができないのは、その人の人格とは無関係であることをまず認識することだ。部下に対して「正しい教え方」をすれば、どのような部下でも必ず成長し、大きな戦力となってあなたを助けるようになるのだ。

では「教える」とは一体何か? 私は「教える」とは、次のように定義している。「教えるとは、相手から"望ましい行動"を引き出す行為である」。人は「教える」ことによって相手を望ましい行動へと導くのだ。望ましい行動への導き方には次の2種類がある。

①相手が望ましい行動を身につけていない場合→望ましい行動をできるようにする

(例)初めて使うパソコンソフトの入力方法を教えるなど

②相手が間違った行動をしている場合→望ましい行動へと変える

(例)お客様への対応が間違っているときに望ましい対応を教えるなど

また、仕事を教えるに当たって実践してほしいことは、教える内容を「知識」と「技術」に分けることである。「知識」とは聞かれたら答えられること、「技術」とはやろうとすればできることである。なぜ分ける必要があるのかというと、例えば自動車教習所をイメージしてほしい。カリキュラムが「学科」と「技能」にはっきり分けられ、教える側も教えられる側も何をしているのかが明確となり、効率よく学ぶことができるのだ。

次に部下に対して望ましい行動(成果につながる行動)を教えるのだが、「成果につながる行動」はどのように探せばよいだろうか? 見つけ方は簡単である。成果を上げている優秀な社員の仕事ぶりを観察し分析することだ。そうすることで、成果を出すために絶対欠かせない「行動」が浮き彫りになる。こうして「成果につながる望ましい行動」を見つけ出し、それを一覧に書き出してチェックリスト化すれば、リストに書かれている行動は"成果を出している人の行動"なので、それを再現することによってどんな人でも成果を上げられる可能性が飛躍的に高まるのである。優秀な社員の行動を観察し、チェックリストを完成させるには多少手間がかかるが、一度作ってしまえば、他の部下を指導する際にもそのまま活用できる。

これまで話したことは、教える技術の初歩となる部分だが、人材育成で困っているマネジャーは、ぜひ一度試してみてほしい。そして教える技術を身につけ、「人を育てる喜び」を実感してほしい。これまで成長が見られなかった部下や後輩が成果を上げていく様子を目の当たりにするだろう。

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