採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント [2014.05.12]

2014年5月


HRプロ株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主任研究員 松岡 仁)


 HRプロ代表の寺澤です。
 4月24日にリクルートホールディングス・リクルートワークス研究所より、2015年3月卒業予定者の大卒求人倍率が発表されました。学生の民間企業就職希望者数は、前年の42.6万人から42.3万人へと微減だったのに対して、民間企業の求人総数は前年の54.4万人から68.3万人へと25.6%の大幅増となり、大卒求人倍率は前年の1.28倍から1.61倍へと0.33ポイントの大幅上昇となっています[図表1]
 これまでにもHR総研をはじめ、就職情報会社や新聞各社による採用計画数調査の結果が発表され、前年よりも企業の採用意欲が高まっていることは報道されていましたが、新卒採用の基本指標となっているリクルートワークス研究所の大卒求人倍率により、経年比較が可能になりました。今回の1.61倍は、リーマン・ショック直後[注]の2010年3月卒業予定者の1.62倍とほぼ同じ水準に戻ったことになります。
 [注]リーマン・ショックは2008年9月に起こりましたが、その時点で翌2009年卒採用はほぼ
    終結しており、その影響が表れたのは2010年卒採用からになります

[図表1]大卒求人倍率の推移

  資料出所:リクルートワークス研究所「ワークス求人倍率調査」([図表2]も同じ)

 

より厳しくなる中小企業の採用環境

 新聞各社の調査は大企業中心の調査となっているのに対して、リクルートワークス研究所の調査は中小・中堅企業も対象としていることが特徴です。
 従業員規模別求人数の対前年増減率を見てみると、「1000~4999人」「5000人以上」の大企業はそれぞれ+4.5%、+5.0%と微増だったのに対し、「300~999人」の中堅企業では+11.9%、「300人未満」の中小企業では+44.5%と大幅増となっています。中小企業の採用意欲の高まりが、大卒求人倍率の底上げとなっていることが分かります。
 また、従業員規模別の求人倍率を見ると、「5000人以上」は0.55倍(前年0.54倍)、「1000~4999人」は0.84倍(同0.79倍)、「300~999人」は1.19倍(同1.03倍)とそれほど大きく上昇していないのに対して、「300人未満」では前年の3.26倍から4.52倍へと実に1.26ポイントもの上昇となっています[図表2]。選考スケジュールが前年よりも2週間ほど前倒しになっているなど、大手企業同士による学生の激しい争奪戦が報じられていますが、その裏で中小企業の採用は、その比ではない厳しさにさらされているというわけです。
 採用スケジュールが繰り下げとなる2016年新卒採用では、中小企業はさらに厳しい環境に置かれることになります。今回は、2016年新卒採用を視野に入れたインターンシップと、来年の面接選考開始時期について取り上げてみたいと思います。

[図表2]規模別に見た大卒求人倍率(2010~15年卒)

 

インターンシップ実施企業が急増

 HR総研が2013年12月に行った調査で、2016年新卒採用を視野に入れてのインターンシップの実施予定を聞いたところ、実施を取りやめる企業はわずか1%にとどまり、今年から「新たに実施する」企業が10%になりました[図表3]。24%の企業が「(実施は)未定」としており、「これまで通り実施する」とする企業が26%であることを考えると、「新たに実施する」企業の10%がいかに大きな数字であるかを分かっていただけると思います。はっきりと「実施しない」と回答した企業は39%にとどまります。

[図表3]2016年新卒採用向けインターンシップの実施予定(全体)

  資料出所:HRプロ・HR総研調べ([図表4~7]も同じ)


 従業員規模別にみると、「1001名以上」の大企業では、「新たに実施する」が18%に上っています[図表4]。「未定」の企業が24%あるものの、「実施しない」としている企業は20%にとどまり、最大で80%の企業がインターンシップを実施する可能性があることになります。
 「301~1000名」の中堅企業、「300名以下」の中小企業においても、はっきりと「実施しない」と回答した企業はそれぞれ41%、45%と過半数を割っています。「新たに実施する」企業はいずれも8%となっており、企業規模に関係なく、インターンシップを採用活動に活かそうとする動きが強まっています。

[図表4]2016年新卒採用向けインターンシップの実施予定(従業員規模別)

 

インターンシップを選考に活用する企業が増える

 「インターンシップを選考に活用する予定かどうか」を聞いたところ、選考のステップとして「インターンシップ参加者だけを選考対象とする」企業は4%とまだまだ少数派ではあるものの、「インターンシップ参加者のうち、優秀な学生は考慮する」とする企業が45%にも上ります[図表5]。インターンシップを応募の必須条件にするわけではありませんが、インターンシップ参加者のうち、気になる学生については3月以前にも何らかの接触を持つなど、通常ルートとは異なるフォローを行っているものと思われます。
 4月8日、文部科学省・厚生労働省・経済産業省は、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を一部改訂しました。インターンシップによる就職・採用活動について、改訂前は「インターンシップと称して就職・採用活動そのものが行われることにより、インターンシップ全体に対する信頼性を失わせるようなことにならないよう留意」と記述されていましたが、改訂後は「就職・採用活動開始時期前に」という文言を追加して、就職・採用活動開始後に行われるケースは問題ないとの考えを示した内容になっています。それまでは全面禁止とされていた、インターンシップで取得した学生情報を企業の広報活動や採用選考活動に利用することについても、実施可能な時期や事例を明確化するなど、インターンシップと就職・採用活動との垣根が少し低くなってきています。今後、この動きはさらに加速していくものと見ています。
 ※「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(2014年4月8日一部改訂)
  ⇒公表資料はこちら

[図表5]インターンシップの選考への活用予定

 

全体の3分の2が解禁日前に選考を開始する意向

 採用指針によりスケジュールが変更される「2016年新卒採用の面接選考をいつから始めるか」を聞いたところ、新しい選考解禁日である「8月」とする企業は24%、「9月以降」の10%と合わせても34%と全体の3分の1にとどまることが分かりました[図表6]。その他の時期で多かった回答は、これまでと同様の「4月」が18%でトップ、次いで「3月」の10%となっています。新スケジュールになっても、現在とさほど変わらないスケジュールで選考を進めるつもりだという企業が多いようです。
 採用広報解禁は3月とされているにも関わらず、2月以前から選考を開始するという企業も少なくありません。これらの企業は明らかにインターンシップによる母集団形成を前提にしていると考えられます。

[図表6]2016年新卒採用の面接選考開始時期(全体)


 従業員規模別に見ると、大企業では「8月」とする企業が46%あるものの、中堅企業では25%、中小企業に至っては16%にとどまります[図表7]。また、大企業の中でも業種による偏りが大きく、非メーカーだけでみると「8月」は30%にすぎません。

[図表7]2016年新卒採用の面接選考開始時期(従業員規模別)


 学生を学業に専念させるために就活期間を短くしようとした今回のスケジュール変更ですが、早期から活動する企業と新しいスケジュールを順守する企業の採用活動時期の差はこれまで以上に拡大し、結果的にはかえって就活期間が長くなってしまう学生のほうが多くなってしまうのではないかと懸念されます。

110506terazawa_pic.jpgのサムネール画像 寺澤 康介 てらざわ こうすけ
HRプロ株式会社 代表取締役/HR総研 所長

86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(現HRプロ)を設立、代表取締役に就任。約20年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。  http://www.hrpro.co.jp/

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