BOOK REVIEW 【編集部】 [2011.04.18]

BOOK REVIEW(29)「大人の発達障害者」は、どのように働くべきか? ~『発達障害に気づかない大人たち(職場編)』


『発達障害に気づかない大人たち<職場編>』
星野仁彦著 祥伝社
新書判 780円(税抜き)

発達障害に気づかない大人たち<職場編>(祥伝社新書237)

発達障害に気づかない大人たち<職場編>

前著『発達障害に気づかない大人たち』で著者が明らかにした、見過ごされる「大人の発達障害」。患者の最大の悩みは、仕事がうまくいかず職場で孤立してしまうことである。これは当事者のみならず、上司や同僚など周囲にとっても喫緊の課題であり、ひいてはニートやひきこもりの増加につながっているとの指摘もある。しかし、発達障害の短所と長所を認識することで、これを改善することは可能だ。本書では「職場の発達障害」の対処法について、「時間や約束を守れない」「仕事に集中できない」「上司や同僚とのコミュニケーションがうまくとれない」といった具体的場面に即して当事者・周囲の人の両面からアドバイスする。

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周りにいる同僚社員や上司・部下、あるいは自分自身で、以下に挙げる態度・行為が当てはまる人は、かなり多いのではないでしょうか。

・会議の最中などにボーっとする
・人の話を最後まで聞けない、自分の言いたいことだけを一方的に話してしまう
・忘れ物やうっかりミスなどが多い
・用もないのにウロウロ動く
・貧乏ゆすりがひどい、指でコツコツ音を立てる
・キレやすく、些細なことで怒りが爆発する
・TPOをわきまえた振る舞いができない
・ その場の雰囲気や勢いで異性と関係を持ちやすく、浮気や不倫が多い

実はこれらは、ADHD(注意欠陥、多動性障害)の典型的な特徴です。

■大人の発達障害者にとって、最大の問題となる「職場」

ADHDや、「アスペルガー症候群」をはじめとするPDD(広汎性発達障害)は、いわゆる「発達障害」の代表例です。

「発達障害」というと、乳幼児期から18歳未満くらいまでの発達期に特有の脳機能障害であるように思われがちでした。しかし実は、職場で働く大人たちにだって発達障害者は数多く、ごく当たり前にいる――このことを明らかにした、著者の星野仁彦さんの前著『発達障害に気づかない大人たち』(祥伝社新書 2010年)は、大きな反響を呼びベストセラーになりました。

その続編として出されたのが本書です。「大人の発達障害者」にとって最大の問題となる、社会人として働く場面について、細かく分析していきます。

■こんな誤解をしていませんか?

ところで、「大人の発達障害」がクローズアップされることについて、以下のような見方をする人も少なくないのではないでしょうか。

・ 上記のADHDの特徴は、個人の性格や個性、ちょっとした不注意の部類であって、「発達障害」と大仰に言うことに何の意味があるのか?
・ 同僚のこうした特徴をあげつらって「発達障害」とレッテル貼りすることによって、人格否定、人格攻撃につながるのではないか?(例えば、本来“教育を受け ているのではなく、雇用されておらず、職業訓練を受けているのでもない状態”を表す言葉であった「ニート」や、学習指導要領の通称に過ぎなかった「ゆとり 教育(世代)」という言葉が、ある種の蔑称として使われているように)
・ 自分が「脳機能の障害なんだ」と納得してしまうことで、改善に向けた成長への努力を放棄してしまうのではないか?

言うまでもありませんが、著者が本書で目指していることは、これらの見方とはまるで正反対のことです。

■本書が目指していること

本書が目指すのは、むしろこういうことではないでしょうか。

自分の社会的行動やコミュニケーションの不適切さにより失敗を重ね、その結果自分を卑下し、自尊感情を大きく損なっている人がいます。彼らに、“その原因は脳機能の障害にあるのだ”と明示することで、ある種の「自己洞察と気づき」を与えることができます。具体的には、治療を受けて症状の改善を図ったり、発達障害ならばこそ気をつけるべきことを明確にすることで、不適切な言動を未然に防ぐことができます。決して、「発達障害」という言葉を逃げ道に、現在の状況に安住することを勧めるものではありません。

また、著者は、精神障害などを連想してしまいがちな「発達障害」という名称が、偏見や誤解の原因になっていることを重視し、「発達アンバランス症候群」と呼ぶべきではない、と提唱しています。

■発達障害者として生きること

著者自身が、自分も発達障害(「不注意優勢型のADHD」)であると公言していることも重要だと思います。

幼少期から事故が絶えず、自分の興味にあることだけにのめりこみ、教室では常に浮いた存在で、学生時代に一人暮らしを始めると生活はたちまち破たんを来した――そんな著者は、これらが脳機能の障害のせいだと気づくことで「目から鱗が落ちる想い」をしました。以来、ADHDのマイナス面をカバーするため、周囲に迷惑をかけない仕事方法を自らノウハウ化していきました。

そのためか本書は、発達障害者やその周囲の人々への温かい眼差しと、血の通った励ましの言葉であふれています。決して、つまらない差別意識を助長するものではありません。

■“これは自分の問題ではない”と断じてしまうのはもったいない

最後に。自分自身も、自分の周りの人も、発達障害ではないから、本書は自分にとって無縁のものだ――と判断してしまうのは少しもったいないところです。

本書で、著者自らの経験から語られる一連の「発達障害者であれば心掛けるべき仕事術」の数々は、多くのビジネスパーソンにとっても有用なものです。

例えば、「仕事の進め方に問題がある場合」については、以下のような仕事術を紹介しています。

・ 「やるべきこと一覧」でスケジュールを管理する
・ 段取りを良くするために、自分専用の作業マニュアルを作る
・ 手帳を徹底的に使いこなす(ポケットに入るような小型の手帳にやるべき仕事を書き込み、1日に最低でも10回は見返す)
・ 仕事は小分けして、できることから順番に片づける
・ 時間の管理のために、携帯電話のアラームやキッチンタイマーなど、身近な仕掛けを用意する
・ 書類などは置き場所を決め、使ったら必ずそこに戻す

いかがでしょうか。発達障害者のみならず、自分の仕事の進め方に問題があると思うビジネスパーソンであれば、「なるほどな」と納得できる、“使えるノウハウ”が本書には満載されています。

◆目次
第1章
発達障害とは何か―能力があるのに仕事ができない本当の理由
第2章
発達障害者が仕事をうまくこなすには―職場で自分の特性を活かすコツ
第3章 職場で発達障害者を活かすには―周囲の人ができる11の工夫
第4章
他人とは違うからこそできること―発達障害に向く仕事、向かない仕事
第5章 発達障害の診断と治療法―障害のメカニズムから心理療法、薬物治療まで
第6章
うつ病・依存症と、発達障害―乱れがちな日常生活を改善するライフスキル
あとがき
大人の発達障害をめぐる現状と課題

◆著者profile
星野仁彦 ほしの よしひこ
1947年、福島県生まれ。心療内科医・医学博士。福島学院大学大学院教授。福島県立医科大学卒業。米国エール大学児童精神科留学、福島県立医科大学神経精神科助教授などを経て、現職。専門は、児童精神医学、スクールカウンセリング、精神薬理学など。

禁無断転載
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