コンサルタントが世界一やさしく教えるビジネス思考【太期健三郎】 [2011.08.17]

あなたの仕事は「積み上げ思考」ですか? それとも「ゴールからの逆算思考」ですか?:コンサルタントが世界一やさしく教えるビジネス思考(9)


コンサルタントが世界一やさしく教えるビジネス思考(9)
太期 健三郎 だいごけんざぶろう
ワークデザイン研究所 代表

仕事を進める考え方には大きく分けて二種類あります。一つは「積み上げ思考」、もう一つは「ゴールからの逆算思考」です。両者は対照的なものです。「積み上げ思考」は現状を起点に考え、「ゴールからの逆算思考」は未来、あるべき姿を起点に考えます。前者は「自分都合」、後者は「相手、顧客志向」となる傾向があります。高い成果を出し続けるビジネスパーソンは「ゴールからの逆算思考」で仕事を進めます。

●「ゴールからの逆算思考」、「積み上げ思考」とは

「ゴールからの逆算思考」とは、最初に目標(ゴール)を具体的にイメージして、そこから現在へさかのぼって(逆算して)、その目標に到達するための手段、方法、スケジュールを考えるという思考方法です。仕事の成果を高めるために大切な考え方です。

それと反対の考え方に「(現在からの)積み上げ思考」というものがあります。ゴールを明確に描くことなく、進めながら実際に積み上がったもの(積み上げた実績)が最終的な成果となる――という考え方です。「無計画」な「出たとこ勝負」の考え方といえます。

「スケジュール」と「価格」という二つの例で、「ゴールからの逆算思考」と「積み上げ思考」を比較しながら考えてみたいと思います。

●「ゴールからの逆算思考」のAさんは…

仕事の締め切りまでに余裕をもって仕上げるAさんと、いつも締め切りギリギリ、遅れることもしばしばあるBさんがいます。
部署内に新しいシステムを導入するという仕事をAさん、Bさんがそれぞれ担当するケースで考えてみましょう。

Aさんは「○月×日に運用開始だから」→「2週間前までには2回のテスト運用を終わらせる」→「そのためには2カ月前までにファーストバージョンを完成させる」→「そのためには×月×日までに詳細設計を終わらせる」→「そのためには……」と最終ゴールから逆算してスケジュールを立てて、仕事を進めます。

ポイントとなる各ステップの納期を定めているので、遅れ気味の場合は早めに対策を考え、必要に応じて上司や関係者に相談します。そのため、上司は安心してAさんに仕事を任せることができます。

[図表1] ゴールからの逆算

●「積み上げ思考」のBさんは…

Bさんは、仕様確認、全体設計、詳細設計、ファーストバージョン完成……と仕事を進め、それぞれに掛かった時間が積み上がり、「結果として」納期となります。どれだけ時間が掛かるのか、やってみないと分からず、進行が遅れ気味の時に上司が「大丈夫か?」と心配しても「大丈夫です。頑張ります!」と根拠なく答え、ふたを開けてみたら「締め切り滑り込みセーフ」だったり、「締め切り遅れ」となったりします。

このような進め方であるため、Bさんに仕事を任せる上司は不安で、いつもヒヤヒヤしています。夏休みの最後に宿題が終わらない小学生のようですね(笑)。

●「価格」という観点から両者を見比べてみると

次に価格(値付け、プライシング)で二つの思考を比較します。カジュアルウェアを製造、販売しているA社とB社がポロシャツの価格を決めるという例で説明しましょう。

・ターゲット顧客層が期待する価格を最初に想定するA社
A社は、競合他社の価格を分析しつつ、ターゲット顧客層が期待する価格(ゴール)を最初に想定します。そして、そこから逆算して、材料費、人件費、製造経費、外注費などをいくらまでに収めなければならないかを考え、それを実現するために材料の調達先、製造プロセス、製造外注先などを考えます。ゴールからの逆算思考による戦略的プライシングといえます。

・経費を積み上げて価格を考えるB社
それに対してB社は、材料費、人件費、製造経費……などの経費を積み上げ、そこに自社の利益を上乗せして価格を考えます。顧客ニーズにマッチしない価格となることが多く、販売状況が思わしくないと採算度外視の値引きをして大赤字となったりします。

[図表2] 「積み上げ」式の価格設定

●二つの思考法には、本質的な違いがある

これら事例から、二つの思考は「時間」や「お金」についての考え方の違いと思うかもしれません。しかし、それだけではない、もっと本質的な違いがあるのです。

「積み上げ思考」は現状から出発し、今のできる範囲内で物事を考えます。そこには、改善、工夫、創造という考え方はあまりありません。

「ゴールからの逆算思考」は、理想・期待から出発し、それを実現するためにはどのようにすれば良いか?――を考えます。問題解決型思考と言えます。

また、「積み上げ思考」は、相手のことよりも「現在の」「自分」を中心に考える、自分都合の供給者論理(プロダクト・アウト)といわれます。

「ゴールからの逆算思考」は、相手都合、顧客志向の需要者論理(マーケット・イン/マーケット・アウト)の考え方です。これは相手の言いなりになるということではなく、相手と自分のWin-Winの状態を考えることなのです。

プロダクト・アウト:自社の販売・生産計画に基づき、ときに自らの都合や思い入れを優先させて生産活動を行うこと

マーケット・イン:消費者のニーズを十分に検討したうえで商品化する、「顧客優先」の考え方

相手を「顧客」、「上司」、「同僚」などに置き換えて、日常の仕事を「ゴールからの逆算思考」で考えることが、高い成果を出し続けるビジネスパーソンの思考の習慣といえるのです。

「ゴールからの逆算思考」は、最初にゴール、目標を明確に描き、PDCAサイクル(計画→実行→評価→修正)を回すという、仕事、経営の基本となる考え方です。

次回のコラムでは「PDCAサイクルの正しい回し方」、その次は「適切な目標設定」について説明します。ご期待ください。

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