ゆとリーマンの逆襲 同情するなら育成してくれ!【常見陽平】 [2011.09.29]

“牧歌的な”内定式など、もうやめてしまえ


ゆとリーマンの逆襲 同情するなら育成してくれ!(第22回)
常見陽平 つねみようへい
株式会社クオリティ・オブ・ライフ チーフプランナー

台風が過ぎた後、一気に涼しくなりましたね。気付けばもうすぐ10月です。10月といえば、内定式。今回はこれに対して思うことを激白したいと思います。

■15年前のその日、私は内定式をサボり、城 繁幸は早退した

就活生のころの私は、ナイフみたいにとがっていました。就活の時も企業社会に飲み込まれるのはごめんだと思い、「10年後の自分はどうなっていたいですか?」などと面接で聞かれるたび「お前、10年後はいないだろ・・・」と心の中で面接官に向かって叫んでいました。内定が出た後も、できるだけ企業に拘束されたくないと思い、内定者アルバイトなどは極力断るようにしていました。

私のゼミの指導教官も厳格な方で、就活でゼミを休むことは絶対NG。もし、面接がゼミとかぶったら変更を依頼する、対応しない場合はその企業は諦めることになっていました。そして、就活が忙しくなる期間も容赦なく、プロジェクトがあり、よく徹夜明けのまま面接に行きました。極めつけは、「内定式には行かないように」というアドバイスです。学校がある時期に、内定式で拘束されるのはおかしい、と。私はその言葉を真に受け、たしかに大学の講義もあったので内定式を欠席しました。だから、私、内定式の思い出がないのです。そういえば、同世代の人事コンサルタントで『若者はなぜ3年で辞めるのか』(光文社新書)著者、城 繁幸氏も昨年、Twitterで「内定式は途中で早退した」と言っていました。(http://twitter.com/#!/joshigeyuki/status/27239204890)

彼も97年新卒で社会人同期なわけですが、同じ日にリクルートと富士通ではそんなドラマが起こっていたのです。

■採用担当者として内定式で感じたこと

それから約9年後、私は採用担当者になっていました。自分も出たことのない内定式の準備と運営に取り組んだわけです。内定式をボイコットした私が関わるなんて、人生は不思議なものです。

採用担当者としての内定式は実に感慨深いものでした。その年の採用活動が走馬灯のようによみがえるわけです。前年の採用戦略会議、サイトやパンフレットの原稿を準備したこと、各種説明会、面接、内定出し、そして、口説きに内定者研修・・・。特に欲しい学生に内定を出したところで、逃げられることもよくあるわけですよ――。口説いていた学生が入社を決断した時のことなど、やはり鮮明に思い出に残ります。

内定式は、社長の講話、内定証書の授与、内定者代表の挨拶などで進み、その後、研修や懇親会という流れが一般的です。中には、内定式に合わせて宿泊を伴う研修がある企業も。

内定式には、企業の新しい仲間となることや、今一度、内定者として気持ちを引き締めること、卒業→入社に向けての成長を意識させることなどの意味があります。内定式は10月1日前後に集中するので、他社に行かないという確認の意味もあるでしょう。まぁ、内定式直前にも辞退の電話はかかってくるわけですが・・・。企業の中でも、「ウチの会社は、今年も新卒を採ったんだぞ」ということを社内にアピールし、成長と組織の活性化を図ろうとする意図もあります。そして、採用担当者によっては、その年の採用活動の成果を経営者や幹部にプレゼンテーションするという意味もあるにはあるのです(もちろん、採用の成果というのは、短期・中期・長期でモニタリングするべきなのですが)。

■今こそ問いたい、内定式の意義

ここで問いたいのは、貴社の内定式は、目的に照らして最適なものになっているでしょうか――ということです。学生たちの話を聞いていると、「そこに意味はあるのか?」と感じることがあります。内定者にしてみれば、学生生活の貴重な1日ですし、企業にしてみてもわざわざお金をかけて全国から人を集め、さらには、企業の幹部が参加します。果たして、それだけの意味がある内容になっているでしょうか?

実施日程は、できれば週末がいいですよね。地方からきた学生も参加しやすいですし、学業も阻害しません。懇親会や、泊まり込みの研修などもセットにしやすいです。社員は休日出勤になってしまいますが、逆に業務がない日なので、懇親会や研修に参加する社員は集中できます。もちろん、平日の社内を体感してもらう、現役社員と交流しやすい、企業の行事予定に組み込まれているという事情もありますが...。

内容で激しく指摘しておきたいのは、経営者などの挨拶です。お願いだから、自分の言葉で、自分や自分の会社のことを語ってくれと言いたい。どうせ皆、「我が国は未曽有の危機に・・・」とか、「大きな転換期に・・・」とか、「グローバル化が・・・」とか言います。しかしながら、たしかに現在はそうした環境変化が早く、顕著なのはわかりますが、そうした議論は大昔からあるわけです。そこで、あなたの企業はどう対応していくのかを赤裸々に語っていただきたいのです。

特に、最近の経営者はドラッカーと松下幸之助の話をしすぎです。それくらい影響力、存在感があるということでしょうが、リーダーたるもの同じものに影響受けてどうするのですか。社長の自己啓発まで横並びですかと、底の浅さを露呈しています。

最近、ライフネット生命 出口治明社長が講演で話されていたのですが、日本とアメリカの人口比率で比較すると、日本人はアメリカ人の5倍、ドラッカーを読んでいるそうです。女子高生のマネジャーもドラッカーを読んでチームを勝利に導く時代ですが、ドラッカー漬けすぎてパンチドランカー気味です(あ、ここはドラッカーとドランカーをかけています)。

そもそも、ネット配信でも済みそうなお互いの存在を確かめるだけの式典なら意味がありません。ここは一つ、内定式の模様をUSTREAMでリアルタイム配信するのはいかがでしょう。アーカイブを残せば、アナタの話がいかに分かりづらいかもわかります。懇親会においては、いかに学生がオトナとのコミュニケーションができないか、社員も、社外の人とコミュニケーションできる力がないかが分かります。また、eラーニングでも済む研修内容をリアルに実施することもはなはだ疑問です。もちろん、時間や空間を共有することに意味はありますが、では共有すべきものとはいったい何なのかをもう一度、考えてください。

このコラムは主に社会人向けですが、学生の皆さんも内定式を見て、「変だな・・・」「大丈夫か・・・」と思ったら、再度自分の就職先を考えるのも手です。日本の法律や慣習は内定取り消しには厳しいのですが、内定辞退はゆるいのです。

単なる儀式としての内定式は、“ただそこにあるだけ”という意味で、とても牧歌的だと感じます。そんな自己満足のための内定式なら、やめてしまってもいいのではありませんか?

もちろん、気持ちを引き締めること、同期意識を高めることなど、一定の意味はあるでしょう。でも、コストに厳しい時代、わざわざ内定式をやる意味とは何なのか、一つひとつのプログラムは必要なのか? 再度考えてみたいところです。内定式だけに、「泣いて意識」するくらい深く考えてください。お後がよろしいようで。

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